この度は「あずみ」の門を叩いていただき、誠にありがとうございます。
今、皆様にお出ししている蕎麦が完成するまで、まさに紆余曲折の歳月を費やしました。
己の未熟さに打ちのめされる日々はさることながら、押し寄せる時代の波、内なる葛藤。
それらと向き合い続ける日々は、今もなお続いております。
かつてない逆風が吹き荒れ、周囲の環境が激変する中にあっても、こうして店が存続できているのは、女将である母の献身と、守り抜いてきた暖簾への執念があるからに他なりません。
今この瞬間に店が在ることを、ある種の奇跡であると静かに噛み締めております。
しかし、そうした絶え間ない試練があるからこそ、私は雑音を振り払い、ただ一点、蕎麦の深淵へと没頭し続けることができたのかもしれません。
この歩みこそが、私を「挽きぐるみの正着」と呼べる一手へ導いたのだと自負しております。
このサイトも、私自身が手ずから作り上げたものです。
見ての通りの簡素な作りではございますが、この余白とシンプルさこそが、今の私の精神そのものです。
飾り立てる我欲や虚栄を削ぎ落とし、ただ本質だけを見つめるストイックな心根があったからこそ、私はこの「至高」の蕎麦まで辿り着けました。
未だ若輩の身ではございますが、「最高のひと皿を召し上がっていただきたい」という熱量だけは、誰にも負けぬ自負がございます。
この暖簾の重みに恥じぬよう、ただ一心に、打てる限りの蕎麦を打ち続ける所存です。
余談になりますが、私は自身の賄いも、決まって冷たい蕎麦を選びます。
まずは何も付けず、蕎麦本来の力強い風味を。
そして私の父であり二代目・池田二郎から受け継ぎ、私の代にかけて改良を重ねた秘伝のつゆにくぐらせ、その調和を。
手前味噌ではございますが、この風味が堪らなく好きなのです。
私、三代目が魂を削り、遂に仕上げたひと皿。
どうぞ、心ゆくまでご堪能ください。
2026年 卯月 吉日
「あずみ」三代目 池田 裕樹 謹白
